世界一のコーチは「放って於けばいい」とは思ったわけではなく
はてなブックマークでホットエントリに入った下記記事
タイトルからちょっと過激で、一見身も蓋もない印象の記事。
タイトルだけを見ると、世界一のコーチは、相手を突き放しているという印象を受けますが、これは記事の内容をみても分かる通り、
コーチできない
という点。
ビル・キャンベルは、コーチングを受け入れられる「コーチャブル」な人だけをコーチングしていた。
https://blog.tinect.jp/?p=66220
ビル・キャンベルがコーチをしたくない、教えたくないということではなく、ビル自身がコーチができるかどうかを確認していたということ。
そんな傲慢な態度をとる人間にはコーチをしない、ということではないのです。
あるセラピストの先生に聞いた話
本当に実績のある、とあるセラピストの先生から昔に聞いたお話(若干内容を変えていますが本質的に同じ話です)。
ダイエットをしたい、今まで何度も途中で挫折、諦めてしまってもう無理だとおもっていたけど、どうしても今度は本気でダイエットをしたいというクライアントからの依頼がありました。
その人は熱心に、今回は本当に本気で、なんとか自分を変えたいから、ぜひとも先生に指導をしてほしいと懇願しました。
その先生はクライアントに、セラピーを受ける前に1つの課題を提示し、それができれば絶対に最後まで責任をもって対応すると言いました。
その課題がなんと、
「明日から1週間、毎朝自宅に配達される新聞紙を取りに玄関に行く」
というもの。
馬鹿にしてるのか
その課題を聞いたクライアントはその先生に、
「ふざけるな!そんな簡単なこと絶対できる!そんなことで何がわかるのか?」
と言ったそうです。
それでも、それができれば先生も覚悟を決めて面倒をみるつもりだったようです。
クライアントの家族からの電話
課題から3日後、そのクライアントの家族からクレームの電話がありました。
「どうしてくれるんだ?!あれから寝込んでしまったぞ!」
結局一度も新聞紙をとることができず、ふとんから出られなくなってしまった。
毎朝配達のバイクの音が聞こえるだけで震えてしまうと。
結局課題をこなすことができず、セラピストの先生が断ることなく終わったというお話。
コーチングとは
馬鹿にされたと思えるほどの課題でもこなすことが困難だったということ。
本人にほんの少しでも自分を変えたいという本気があれば、床を這ってでも新聞紙をとりに1週間こなすことはできたはずだけど、それができなかった。
それは、本気で自分を変えるための「コーチングを受け入れるという気持ち」がなかったということ。
これがビル・キャンベルの言うコーチャブルという状態のことと思います。
コーチャブルな状態ではない人間は、ただ毎朝玄関に新聞紙を取りに行くという課題もこなすことができない。
これまで私は漠然と「世界一のコーチなら、誰でもポジティブに変えられるのでは」と思っていた。
でも、全く逆だった。
「世界一のコーチは、コーチ可能な人物だけに支援を提供していた」のだ。
https://blog.tinect.jp/?p=66220
「コーチ可能な人物にだけ支援を提供していた」という表現が誤解を生みそうな文章ですが、「誰でもポジティブに変えられる」という方法をとる人は、コーチではなくマニピュレーター、いわゆる洗脳に近いものになると思います。
本当のコーチングというのは、コーチをする側も、コーチを受ける側も誠実さが必要で、相手をコントールするものではないのです。
コーチを受ける側もコーチを選ぶ権利があるのは、それはもちろんそうだと思います。
ただ、それはコーチを名乗る人の前で、「それはコーチ(お前)による」と言ってしまうことが、相手を尊重するという誠実さがないことに結びつきます。
傲慢な人間には教えたくない、ということではなく、コーチャブルではない状態の人は、極めて簡単な課題も受け入れられないのに、コーチングが機能するわけがないということです。